トヨタ軽参入で囁かれる、営業残酷物語

トヨタ、軽の車名は「ピクシス」シリーズに
2011年9月7日 日刊自動車新聞

 トヨタ自動車は、26日に発売する軽自動車の車名を「PIXIS SPACE」(ピクシス スペース)に決めた。

 英語のピクシー(=いたずら好きの妖精)を語源とした造語で、12月に発売する予定のバン・トラックにも採用する予定。軽自動車を展示する店舗の名称も「PIXIS STATION」(ピクシス ステーション)とし登録車の店舗と差別化する。

 トヨタが26日に発売する軽自動車は、グループのダイハツ工業からOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けるもので「ムーヴコンテ」がベース。トヨタの販売店はこれまでもダイハツの軽自動車を紹介販売していたが、トヨタブランドの軽としてショールームで展示販売するのは初の試み。

 トヨタは12月には「ハイゼット」をベースにしたトラックとバンを、12年には軽乗用車をもう1車種加える予定。ダイハツが今月発売するリッター30キロメートルの超低燃費車「イース」(仮称)が候補にあがっている。

 トヨタと言えば、理不尽な軽自動車の優遇税制に異を唱えて、軽自動車廃止を訴えていた企業である。それがサブプライムローンから始まった不況により、軽自動車に参入せざるを得ない状況となったのである(トヨタは東北大震災前から軽参入を決定していた)。実際、先月8月のトヨタの新車販売台数は前年同月比23%減である。販売低迷脱出の糸口となるか業界で注目されている。
 しかし、問題はグループ企業のダイハツやスバルへの影響である。これら2社は軽自動車を販売しており、グループ内でのパイの奪い合いが予想される。しかも、軽自動車は薄利多売が基本なので、現場の最前線で働く営業マンへのノルマが上乗せされる可能性が大きい。
 すでに軽自動車に参入している日産の某販売会社では、軽自動車を売っても1台売ったことにならないという内規がある。軽を何台売っても0台となってしまうのだ。その一方で登録の手間は、軽自動車を売ろうが、メルセデス・ベンツを売ろうが同じだ。成績にならない軽自動車を売って、御客に「あんたから買ってやったんだ」と言われても「ありがとうございます」と笑顔で答える営業。
「コメツキバッタ」とも言われる自動車営業の惨めな姿は、いつまで続くのだろうか。