1932  DATSUN Type11 Phaeton どちらが日本最古なのか???

座間にある日産のヘリテージコレクションにある 1932年 DATSUN Type11 Phaeton。
1959年11月に開催された第6回全日本自動車ショーの会場で公式に一般公開されて以来「現存する最古のダットサン」として紹介されてきたようだ。


現存する最古のダットサン車。ダットサン車は1931年に発売され(10型、495cc、10ps/3700rpm)、市販1年目は約10台が生産され、32年には11型として約150台が生産された。
その後1933年に自動車取締令が改正されて750ccに排気量アップされ、車種は4人乗セダン、クーペ、フェートン、ロードスターライトバン、トラックの各種が製造された。
1935年には横浜工場でシャシーからボディーの一貫生産が加わり、大阪工場との並行生産で、年間3800台を生産する当時としては画期的な大量生産車となった。
当時ダットサン車は、
1)国産車である
2)値段が安い(価格:1350円)
3)日本の道路事情に適している
4)燃料費が安い
5)無免許で運転できる(当時気筒容積が750cc以下の自動車は運転免許が不要だった)
など、の特徴が認められ、自家用車やタクシーとして需要が急速に増大し、「ダットサン」の名称は「小型車の代名詞として使用されるほどに普及した。また、アメリカ、スペイン、ポルトガル、インド、ブラジル等の世界各国にも輸出された。(当時の輸出実績、1934年44台、35年53台、36年87台)

https://www.jsae.or.jp/autotech/data/1-5.html

ところが、ところが、昨年11月末に行われたトヨタ博物館 クラシックカーフェスティバルには、これまた「現存する日本最古のダットサン」として11型フェートンが展示されていたのだった。

トヨタ博物館がレストアし所有する個体である。

さてさて、日産とトヨタが所有するダットサン11型フェートン。どちらが現存する最古のダットサンなのか。
答えはトヨタ自動車博物館所有の個体が日本最古なのだ。

日産ヘリテージコレクションが所有する個体のプレートには「戸田鋳物自動車部大阪工場 DATSUN 12427」とある。戸田鋳物とは現在の日立金属の前進で、戸畑鋳物株式会社のこと。これが 1933年にダット大阪工場を70万円で購入。戸田鋳物自動車部大阪工場となった。
トヨタ自動車博物館がレストアした個体のプレートには「ダット自動車製造株式会社 DUTSUN 車体番号9174」とある。ダット自動車の存在期間を考慮すると、トヨタ自動車博物館の個体のほうが現存する最古のダットサンであることは明白である。

伝え聞くところによれば、「貴重な現存する最古の11型」であり保存状態も良好だったようだ。遺族は礼儀としてというか、当然買ってくれるだろうと考え日産に声をかけたのだが、値段で折り合いがつかなかったそうな。いろいろあってトヨタ博物館が引き取るに到った経緯のようだ。

遺族が日産に提示した買い取り料は数百万という良心的なものだったようだが、そんな金額ならゴーン会長のポケットマネーで楽に買うことが出来ただろう。
予算など日産には事情があったのだろうが、会社にとって大切なものであろう「現存する最古のダットサン」を手に入れるチャンスを逃してしまったのは事実である。