CONVAIR B-36 PEACEMAKER

 米ソの冷戦華やかし頃の軍用機には、どこかSFめいた怪しくも懐かしい雰囲気のものが多い。少年だった頃に漫画雑誌の表紙を飾ったこれらのメカニックをたまにはクルマから離れて紹介したい。


 実に不思議な巨大爆撃機である。
 まず目を引くのが、後ろ向きに備えられた6基のレシプロ・エンジン(スーパーチャージャー)と両翼端のターボ・ジェット・エンジンだ。後退翼なのにプロペラというのがミソ。終戦翌年の1946年の8月8日に試験飛行(ジェットエンジンは装備されていない)となったというのだから、アメリカの技術力は凄まじいものがあった。こんな国相手に日本が戦争したのが無謀であったことが理解できよう。あのB-29の5倍の21tもの爆弾積載能力があったというのだから恐れ入る。当時の水爆の重量が14tから19tであり、 B-36が唯一搭載可能な爆撃機であった。
 目的は、来るべきソ連との核戦争に備えた戦略核爆弾攻撃である。
最高速度670㎞/h 上昇限度14,400m
 現役当時は、当然のことながら沖縄の嘉手納はもちろんのこと、横田基地にも飛来している。核爆弾を搭載していたかは日米間の大人の事情で不明だ(苦笑)。



B-29(左)との比較。如何にB-36が巨大なのか一目瞭然だ。


B-36の巨大さが良くわかる映像。乗員は13名と、巨人機に相応しい大所帯が乗りこんでいる。


これは2階建て構造となっている機種の部分。残りの乗員は後部の与圧室におり、予備乗員は3段ベッドで寝たままで離陸することになっていた。


巨大な機体を支えるランディングギアにはキャタピラ付きも検討されたが実験のみで不採用となっている。タイアはグッドイヤーの特注であった



映像は、映画『戦略空軍命令』から迫力の離陸シーン。ジェットエンジンは大食いなので、滑走路と正対してから始動させていることに注意。ジェット噴射で主翼がブレているのも気になる。


Convair NB-36H
B-36をベースとした原子力炉搭載実験機である。自機推進とは関係ない原子炉を後部に搭載し、放射能が機体に与える影響を調べるために試作された。コクピット部分には乗員を守るために4トンもの鉛が使用されている。
アメリカは1946年に早くも、原子力推進航空機の計画を立ち上げている。その内容は恐ろしいもので、コンプレッサーからの圧縮空気を原子炉の冷却として使用し、原子炉の超高温で膨張した空気でタービンを回すというもの。高濃度の放射能を大気中に撒き散らし、乗員の生命をも脅かす恐ろしいものだった。計画は1961年に中止され事なきを得たが、子どもの頃によく原子力飛行機が飛びまわる21世紀の世界を図鑑や漫画雑誌などで紹介されていたことを思い出す。

その原子力飛行機で思い出すのが、TV映画サンダーバードの記念すべき第1回“SOS FIRE FLASH”。最新鋭の超音速原子力旅客機ファイアー・フラッシュ号が指定時間内で着陸しないと原子炉がオーバーロードしてしまうという設定を思い出した。

設定で操縦席は垂直尾翼上部にあることが、子どもの頃に理解できなかった。当然のことながら機種にあるものと思っていたからだ。


ドラマでは、着陸装置内に爆弾が仕掛けられ、車輪が出せないという設定。救助メカのエレベーターカーの大きく上下するサスペンションと緻密な汚し塗装、ディーゼルエンジンの迫力の音、そしてブレーキ時にリアルにバーストするタイアなどなど…。サンダーバードはいま見ても色褪せない特撮が魅力だ。