1937 Rolls-Royce Phantom III Sedanca de Ville by Hooper

 1936年10月、新設計のV12気筒エンジンと、ロールス・ロイスとして初めて前輪独立懸架を備えたファンタムⅢが発表された。この二つの特徴は、全体のスタイリングに大きな変化をもたらした。それまでの6気筒に較べてエンジンがよりコンパクトになり、さらに独立懸架の採用によってエンジンの搭載位置が前進した結果、ボンネットが短かくなり、ラジエターがフロントアクスルより前側に移された。同時に客室スペースが増大し、特に後席の居住性は大いに向上したが、長いボンネットと相対的に小さいキャビン、フロントアクスルより奥に控えたラジエターと言った古典的なプロポーションとは決別することとなる。60°V12気筒エンジンは7338㏄、パワーは約160HP/4000rpmと推定され、4速ミッションは2速以上にシンクロが付いた。コンパクトなエンジンを搭載しPhantomⅡよりも8%軽量化され、パワーは12%増加したファンタムⅢの最高速はロールス・ロイスとして初めて160km/hを超えた。製産台数は第2次大戦の勃発の影響により715台にとどまっている。また前輪独立懸架の採用によって乗り心地は改善されたが、それよりもコーナリング性能がより向上することとなった。
 HooperによるSedanca de Villeは、ドライバー上のルーフがスライドして、リアコンパートメントのルーフに収納される機能を持つ。


ロールス・ロイス製航空機エンジンの技術が生かされたV12気筒エンジン。それまでのエンジンよりも静粛性が高く、スムーズでパワフルであった。点火系は1気筒あたり2本のプラグにより、それぞれ別系統のコイルとディストリビューターによって成り立つ。


エンジン・フードを開けるときは Flying Ladyの羽が邪魔になるので横向きにする。