アルファ・ロメオ 100年の栄光と衰退 その11 TZ


“1963 TZ1”
直列4気筒 DOHC 1570cc 112ps/6500rpm 最高速210㎞/h

ジュリア系列中最も高性能なのはTZシリーズである。永らくレーシング・マシーン作りから遠ざかっていたアルファが、レーシング・クーペを得意とするコーチビルダー、ザガートの協力を得て完成したマシーンだ。エンジン、ギアボックスこそジュリアと共通だが、フレーム、サスペンションはまったく新たに設計されたものだ。

シャシーは他のジュリア系のプレス製フロア・ユニットとは根本的に異り、無数の細い鋼管を熔接した軽く強靱なスペース・フレームで、これをアルミニウム・パネルで覆ってある。サスペンションもフロントこそ他のジュリア系と共通だが、リアはまったく新たに設計された当時のアルファ系列中唯一の独立式である。ファイナル・ユニットはゴムを介してパイプ・フレームに固定され、ホイールはロアー・ウィッシュボーンと固定長のハーフ・シャフトで丁度Eタイプ・ジャガーロータスのように吊られている。スプリングはダンパーを内蔵したコイルで、ロアー・ウィッシュボーンとフレームの間を結ぶ。ブレーキは勿論全論サーヴォ付のディスクだが、普通のジュリアのディスク径が前28.6/後24.6cm であるのに対しTZでは前28.4/後29.1cm に大径化してあり、後輪ではインボードになっている。ホイールベースが2200mmとさらに短かいボディは、自重650kgと驚異的に軽く、112psエンジンとファイナル5.125 の標準仕様車でも軽く200km/hを越える。レースに備えてはTIスーパーと同様、クロス・レシオのギアボックスやより高いファイナルレシオも選択でき、最速モデルは245km/h にも達するといわれる。ジュリアTZは発表と同時に63年秋からスポーツカー・レースに参加を始めたが、早くも64年のセブリング12時間耐久レースで総合13位、1300〜1600cc級GTの1位に入り、タルガ・フローリオにも2台のポルシェ904GTS には破れたがすべての個人出場のフェラーリ250GTO*1を破って総合の3、4位に入った。総延長720km、7時間余に及ぶ激しいレースにもかかわらず、3位の1.6ℓTZはトップの2ℓのポルシェ904に遅れること僅か16分そこそこ、2位に遅れること4分足らずという健闘振りであった。その後、64年ルマン、65年タルガ・フローリオなどなど無数のクラス優勝を勝ち取った。
TZは標準仕様車でもイタリアで320万リラ、当時の邦価換算約186万円とアルファ系列中では2600スプリントに次ぐ高価格車である。現在の中古価格では逆転してTZの方が高いのだろうけど。



“1966 Giulia TZ2”
直列4気筒 DOHC 1570cc 170ps/7500rpm 最高速245㎞/h

生粋のレーシングカーとして少量しか生産されなかった、TZ2。シリンダーヘッドをツイン・プラグとし、ドライサンプ化されたエンジンをはじめ、TIスーパーのメカニカル・コンポーネンツを使用して推定最高速度260㎞/hを発揮したが、信頼性が低く、実際のレースでは平凡な戦績に終わっている。グラス・ファイバーでできたザガート製ボディがチューブラーフレームに載せられており、車重はたったの620㎏にすぎない。
平凡すぎるデザインも含めて、自分の好みではないアルファ。

*1:フェラーリはワークスとして出場しなかった。