アルファ・ロメオ 100年の栄光と衰退 その10 Oh! ジュリア


“1963 Giulia TI Super”
直列4気筒 DOHC 1570cc 114ps/6500rpm 最高速189㎞/h

60年代のアルファを牽引していく重要なモデル“Giulia”。残念ながらベルリーナの写真はお尻からのこれ1枚しか撮っていなかった…。おまけにノーマルのジュリア・ベルリーナは100周年記念イベントで展示されていなかったのだ。


ジュリアTIは十二分にチューン・アップの可能性を秘めていたが、アルファ自身も1963年徹底的な改良強化を施したスポーツ・サルーンをTIスーパーの名で発表した。エンジンはSSのものであるが、それと同時にボディの徹底的な軽量化も実施され,シングルのヘッドライト,オーバーライダーのないジュラルミン製のバンパー、プラスティック製で後ろは固定式にしたサイド・ウィンドー、レーサー・タイプの薄く軽いバケット・シートなどでTIより100kgも軽い960kgにまとめるのに成功している。この結果パワーウェイトレシオはTIの11.5kg/HPから8.5kg/HPに高められ7.95kg/HPのコルティナ・ロータスに近づいた。ファイナル5.125でピレリー・チンチュラートHS155-15タイアをもった標準車でもマキシマムは185km/h に達するという高速車である。レースなどのためには5速ギアボックスを1st:2.54/2nd:1.70/3rd:1.25/4th:1.10/5th:0.86 という極端なクロース・レシオにも変えられる。また4.777,4.555,4.100,3.636の4種のファイナル・レシオも準備され、ZFのノンスリップ・デフも装備できる。TIのデュアル・ランプの内側をつぶしてスターンを張り、フェンダー・サイドにかってのアルファ・レーシング・ティームのマークである四つ葉のクローバーを描いたこのTIスーパーは、当時イタリアでは252.5 万リラ、約146 万円とSSに近い高価格車で、日本では282 万円もした*1





1963年のフランクフルト・ショーで登場したのがスプリントGTだ。これはいわば性能と居住性とスタイルを兼ね合わせた文字通りのGT。ベルトーネ製のボディは同じ2600スプリントのものを小型化したようなモダーンでコンパクトなもので、4人の大人がゆったりと乗れ、180km/hで走れる。ホイールベースは2350mm で、TIより160mm、旧ジュリエッタ・スプリントより尚30mm短かい。エンジンも2個のダブル・チョーク・ウェバー付だが圧縮比が9.0のままなので出力は105HPと92HPのTIと112HPのSSの丁度中間である。64年のCG6月号では「この車は、将来アルファが続々と輸入されるとすれば,最も日本向きのモデルとして好評を博すに違いない」と予想されたがその通りとなった。当時の価格はイタリアで219.5 万リラ、約127 万円で輸入価格は231万円であった。


GTA 1300 Junior”
直列4気筒 DOHC 1300cc 160ps 最高速210㎞/h

ジュリアGTのレース用ホモロゲーションモデルたるジュリア・スプリントGTAは、その“A”がイタリア語で“軽い”を意味する“Alleggerita”に由来していることからわかるように、TIスーパーの考えをさらに進めて、ボディ外板(ドア、ルーフ、ボンネット、トランク)をアルミニウムに代え、1.6ℓエンジンも大幅なパワーアップを前提として、デュアル・イグニッションや“45”サイズのウェバーなどを採用していた。グループ2クラスのツーリングカーレースに投入されると、ヨーロッパではたちまち無敵の存在となったほか、北米でも猛威を奮った。やがて激烈になったこのクラスを退くと、ストロークを短縮して1.3リッター・クラスに移行した。GTAは日本にもロードカーとして正規輸入されている。


“1970 1750 GTAm”
直列4気筒 DOHC 1985cc 210ps/7000rpm 最高速230㎞/h


“SPIDER 1600 Duetto”
直列4気筒 DOHC 1570cc 109ps/6000rpm 最高速185㎞/h

日本国内のイベントでよく見かけるのでお尻しか撮らなかった。子どものころに買ってもらった『交通の図鑑』の外国車のページではお気に入りのクルマだった。そして自分にとってデュエット・スパイダーで思い出す映画と言えば『卒業』だ。

*1:ちなみに“TI SUPER”を仮想敵としたプリンス・スカイラインGTは86万円だった