クライスラー・イプシロン ゴールド
日本ではクライスラーのブランドで販売されるランチア・イプシロンを1週間借りることができた。日本では英国同様にクライスラー・ブランドで販売される。泡沫経済の末期、マツダとの提携が失敗に終わってから、ランチアは日本では正規輸入されていないからだ。
大きく感じられるボディは、意外にも全幅1675mmで5ナンバー。これは3ナンバーのみだった歴代イプシロンと比べて最小の幅となる。500よりも50mmも大きくなった幅は予想以上に室内を広く感じさせる。全高は先代より少し低くなって1520mmだが、我が500と比べると室内が広々と感じる。全長は先代より少し伸びて3835mmとなっている。
縦型のグリルは先代と違い、ダミーではない。きちんと通風孔が開けられている。
特徴のセンターメーターは青白く光る。エンジン始動時は速度計、回転計ともに針が12時を指す演出もある。写真はスタート&ストップが作動してエンジンがストップ時のもの。
プラットフォームは新型パンダのものであり、旧パンダの500とは剛性感が格段に違う。鋼のジャケットに包まれたような安心感は、あらゆる継ぎ目を何事もなかったようにいなす。ひょこひょこと落ち着きのない初期型の500とは違い、しっとりしたランチアらしい乗り心地を味わうことができる。低速でのひたひたと走る感じは小さな高級車という雰囲気が濃厚だ。もちろん、フィアットと違い、遮音や振動対策に一段とコストをかけていることがハッキリ理解できる。
ゴールドに装備のファブリックのシートは掛け心地も良く、腰も疲れない。500のファブリックよりも数段上だ。
さて、組み合わされているエンジンは僅か875ccの2気筒ターボであるツインエアーだが、車重1090kgのボディを軽快に走らせる。エコモードでも隔靴掻痒ということはなく、グイグイと走ってくれる。500の1400ccエンジンよりも低速トルクがあるからだ。通常モードではブイブイ走る。信号グランプリは楽勝のレベルだ。
ただ、問題は、その騒音である。いかに遮音をしようとも、ツインエアーのエンジン音は回すと容赦なく室内に聞こえる。その音がランチアの雰囲気に合っているかと言えば微妙なのだ。少なくとも500の1.4ツインカムと違い、心地よいものには聞こえないのだ。
イプシロンにはスタート&ストップが標準装備だが、これがマメに作動し、瞬時に始動するので、明らかに燃費にも貢献しているし、アイドリング時の振動を皆無にしてくれる。燃費だが、渋滞の都内で12km/リッター走った。これは500の1.4よりも少し良い数値である。
シングルクラッチのセミATであるデュアルロジックも改良されており、500における2速へのシフトアップ時に感じていた減速感は明らかに無くなっていた。
バックソナーも標準装備。リアランプ類はLEDである。
燃料給油口も500と違い、ドアロックと連動したもの。
ボンネットのリッドも、500の板状のようなチープさはない。
標準のタイアは185/55R15。アロイホイールはイプシロンの”Y”がモチーフとなっている。
イプシロンは素晴らしいクルマだった。ただし、クライスラーのエンブレムが無ければの話だが。クライスラーの顧客がこれを買うとは思えないと考えるのは、私だけであろうか。。。