French Blue Meeting 2012   1949 Citroen Traction Avan 11 CV Legere

Citroen 4cyl OHV 1911cc 55hp/3800rpm MAX 118km/h.

1931年、大恐慌の傷が未だ残るアメリカ合州国に上陸した創業者 André Citroën。尊敬する Henry Fordを再び表敬訪問した彼は、帰国後に無謀にも JAVEL河岸の工場の大改築を命ずることとなる。すべては革新的な前輪駆動車の生産のためであった。それまでの Citroenは米国車に影響された非凡な乗用車を生産するメーカーにすぎなかったが、渡米時に彼が受けたインスピレーションは巨大なものであり、それが従来からの保守的な企業スタンスからの脱却を目指すようになったと想像される。



それは世界初の量産FF車であり、ムッシュGrégoireの等速Uジョイントが採用された。これにより低重心のボディが可能となり、必然的に当時としては画期的なモノコック・ボディが採用されることとなる。それに伴い前輪独立懸架が採用されたが、当時の標準であったリーフではなく、トーションバーが採用された。リアもトレーリングアームによる半独立懸架となっている。エンジンは、その後のDSにも採用された Citroen初のOHVヘッドを採用した。
フランス車好きが自慢する、優れたハンドリングと乗り心地の両立、高い巡航性能と高速でのスタビリティーは、このクルマから始まったのだ。



違和感のないマスコットはノン・オリジナル。



サイドマーカーはアールデコの雰囲気。



ウィンドウ・バイザーは純正オプション。高速アイテムですね。



Michelin Xのサイズは 165 R 400 875。これはフランス製ですが、工場は東ヨーロッパに移ったそうです。



大恐慌直後のヨーロッパで、新たな生産設備に投資することは危険な掛けであった。莫大な設備投資は Citroenの経営を圧迫し、遂に銀行からの融資も途絶えて 1934年末に Michelinの傘下に組み込まれることとなる。自分が創業した会社を乗っ取られた André Citroënは、1935年7月、失意のうちにこの世を去ることとなる。パリの街は Traction Avanで埋め尽くされようとしていたその時であった。
その5年後、パリの街はナチス・ドイツの支配下となるのである。