小林彰太郎さんがドイツ車を所有しなかった理由

CG FESTA 2012より、元CG編集部員、吉田匠さんのポルシェ356。紺のポロシャツを着ているのが吉田さん。

小林:僕はね、余りにもフロント・エンジン時代が長かったから、911やミドエンジン車には抵抗あるんですね。特にミドエンジンでは914/6に乗った時、FISCOのバンクにあった馬の背で跳ねて、くるくる回ったことがあるものだから、それ以来どうも苦手だな。僕はレーシングドライバーでもないし、反射神経もトロいんでしょうね。だから、ああいう風にスピンしかかると間に合わないですね。

(中略)

徳大寺:そんなこともあって、ポルシェは駄目なんですか。というか、小林さんはやはり心情的にドイツ車万歳じゃないんですね。

小林:それは単純に性能を計れば、ポルシェやBMWなんかいいだろうけれど、さっきもいったように、計測できる性能というのはクルマ全体のパフォーマンスの中の、あるいは魅力の中のごく一部でしょう。僕なんかそれよりも情緒的な雰囲気とかフィールとか、室内の気持ち良さなんかの方に魅せられるんでしょうね。
 機械として見ればドイツのものが一番いいと思います。信頼性もあるしね。でもそれだけじゃあ、冷たい機械が作った機械というという感じでね。だからイギリスの車とか、出来は多少悪いけれど楽しいイタリアの車なんかの方が性に合っているのでしょうね。

二玄社刊『小林彰太郎の世界』+徳大寺有恒との対話 より)