1968 HONDA RA302



空冷120度V8気筒 2987cc DOHC 32valve 430hp/9500rpm

1968年シーズン、ホンダは水冷V12の RA301と並行して、空冷エンジンの RA302を登場させた。空冷エンジンの乗用車を開発市販しようとしていたホンダとしては、水冷エンジンでF1に参加するというのは「走る実験室」として当然の帰結であった。
 そこにとばっちりを受けたのはF1チーム監督の中村良夫氏である。
 ボディには空冷のダクトが張り巡らせていたが、結果は、オーバーヒートをするために出走しているような体たらくであった。デビュー戦で死亡事故を起こしたことも、このマシンに暗い影を落としている。

 それだけではない、グランプリを勝ち得る実力をもっていた水冷の RA301の開発熟成の足をひっぱり、ホンダのグランプリの戦力を大幅に低下させてしまったのである。
 空冷V8という極端なアマチュアリズムによって、ホンダのグランプリ戦力まで相殺してしまった。私は客観の場において、そのように考えている。最強のエンジンをグランプリの墓場に葬り去るのは、私自身としては非常に心残りであったけれど。

中村良夫氏はこのように述懐している。