The 500cc Racing Car


今月のYMRで HASSYさんが持ち込んだ Cooper-Norton
500ccのバイクのエンジンを搭載した F3カテゴリー。

 そもそもは第2次大戦後のことである。
 
 多くのモーター・スポーツをこよなく愛する者たちは、戦後の法外に金がかかるレースに失望していた。有志によって結成された‘500 Club’(後に‘Half-Litre club’に改名)は、バイクのエンジンを搭載したフォーミュラーという画期的なカテゴリーを考え出した。これにより大幅にレースにかかる経費は削減され、最終的にはモーター・スポーツを多くの人々の手の届くものとした。
 アイデアは大成功し、そのレースの人気をFIAも無視するわけにはいかず、1950年以降、500ccのカテゴリーはF3として国際的な地位を得ることになる。
 F3は財布の軽い若者にとって、レーシング・ドライバーを目指すための画期的な登竜門となった。


 Cooper親子が最初の Cooper500を完成させたのは 1946年7月のことである。Vauxhallと Fordのディーラーを親子で経営していた Cooper親子は、息子 Johnのバイク友人である Eric Brandonの示唆により、オートバイ・エンジンを搭載した500ccレーシング・カーを造ることになる。シャシーは Fiat Topolinoのフレームと横置きリーフ・サスペンションを利用し、エンジンはスプリント・モーターサイクル用として定評のある JAP500をコクピットの背後に搭載した。性能は素晴らしいもので、そのパフォーマンスは当時の2リッターに匹敵したと言われている。当然のことながらレースでは他を圧倒し、Cooper親子は「量産して欲しい」との要望に応えて Cooper Mk IIを製造する。
http://www.500race.org/Marques/Cooper%20Mk%20II.htm

 このマシンの愛用者は Stirling Moss等、後にグランプリで活躍するドライバーが目白押しの状態であった。Cooperでなければ勝てなかったのである。


この Cooper-NortonはF3の最終型となる。エンジンは Manx Nortonと呼ばれたマン島TTレース仕様のエンジンで、排気量 499cc 48ps/6000rpm。スプリント・チューンのJAPよりもパワーは落ちるが、はるかに優れた耐久性を備えていた。シリンダー軸を15度後方に傾けて搭載している。これにより 65mmほど取り付け位置を低く抑えている。

 このマシンも圧倒的な速さでレースを席巻したために、F3は 1958年シーズンで幕を閉じることになる。Cooperを凌ぐライバルは事実上皆無となり、Cooperのワンメイク・レースの様相を帯びてしまったのが要因である。ちなみに 1958年シーズンの全18レース中、Cooperが全勝しているだけでなく、内12レースで1〜3フィニッシュとなっているのである。