Racing management Alan Mann (1936-2012) Part5

 私がこれまで提示したチーム・マネージメントの問題は、参加申し込みや、移動日程、車両準備など明確なものにすぎない。ではドライバーを選択したり扱ったりするような、目に見えない問題を考えてみよう。
 ドライバーはチーム・マネージャーにとって身につまされる問題だ。選択するときに、運転の才能が必ずしも重要なファクターではないと聞いたら驚くだろう。私にできる最良の方法は、異なったタイプのレースにドライバーのどんな性質や能力が必要なのかを見極めることだ。
 イギリスで最も盛んで一般的なものは、数ラップの距離しか走らないスプリント・レースである。F1でもサルーンだろうとも、クルマとドライバーは最高スピードが出せる性能と能力が必要になる。もし、どちらかが欠けていたら、この種のレースで勝ち目はない。
 スプリント・レースでは、レース中に追い越して逆転する望みは少ないので、スタート・フラッグが下ろされた瞬間に躊躇していてはダメだ。さらにドライバーはいくら速くてもミスを犯しては、長距離レースのように挽回できる機会がないので速い意味がなくなる。スプリント・レースではドライバーの性格はそれほど重要視されない。ライバルよりも1ラップで 0.5秒速ければ、私はどんなドライバーだろうが目をつむることができる。
 往々にしてないがしろにされているが、ドライバーを採用するときに重要視することはテスト・ドライバーとしての能力である。どんなクルマでも、長時間のテストを行わずして、レースに望んだりすることほとんどない。したとしても、それでレースに勝ったことは聞いたことがない。今日の高度なコンペティションでは、新しいレーシング・カーを買って、すぐにレースに勝つことはできない。ドライバーとコースに合わせて調整したクルマは必ずいくらかスピードを上げることができる。
 これをやるためには多くのファクターを考慮しなければならない。例えばキャンバー、キャスター、トーインの調整。スプリングの硬さ、タイアの種類と空気圧、前後ロールバーの太さ、前後のブレーキのレシオ、どれだけオーバーまたはアンダーステアが必要なのか調べなければならない。