Racing management Alan Mann (1936-2012) Part4

 レース当日はスタート前の最後の瞬間まで気が落ち着く暇はない。ドライバーにレース中のポジション、ラップ・タイム、エンジン回転数の限度の指示、ドライバーの奥さんたちをタイム計測係とコーヒー係にまとめ、給油の規則をチェックして合致しているか確かめ、そして最後は、長靴を履いたピット・マーシャルが腕章をしていない1人のメカニックを放り出すのを、穏やかに思いとどまらせることとなった。
 我々のチームに関する限り、その日はとてもうまくいった。Boehringerと Glemserの乗る MERCEDES-BENZ 300SEに対抗して総合優勝を狙った。‘Autosports’誌は翌週次のように書いている。「彼らは疑いなくトップを争えたが、常識的にクラス優勝で満足した」。
 我々は Whitmore / Hegburn組が総合2位、クラス優勝、Taylor / Harper組が総合3位、クラス2位で満足した。どちらのクルマも同クラスの次点のクルマよりも 20分以上も早くフィニッシュしたので、かなりの優秀性を証明した。小説ならばこれでハッピーエンドとなるわけだ。しかし、面倒だがレース後の再車検にパスしなければならない。この時は問題がなかったが、時としてオフィシャルが何かを悪い方向に解釈することが多いのだ。トロフィーは夜の表彰式で渡されるのだが、ドライバーと私は2日後の火曜日にスタートする Alpen Rallyのためすぐに 960kmも離れた南フランスの Marseilleへ行かねばならなかった。しかし、いつも同じということはない。
 ところで、このたった1つのレースの概略で、びっしり詰まったレース・カレンダーの最中にどんなことが起こるか分かっただろう。この‘Nuerburgring 6h-Saloon Car-Grand Prix’では全てのことが予定通りうまくいき、レース結果も予期したとおり、しかも2台まとまってフィニッシュすることができた。しかし、いつもこんなに簡単にいくとは限らない。