Lexus LFA をズタズタに斬る

グッドウッドには、毎年のように欧州トヨタが御自慢の失敗作を展示します。10年前ほどでしたでしょうか。トヨタ7をこともあろうに素人の日本人社長が調子に乗って運転してクラッシュ。万の観衆の失笑を買った事件が起こったこともあります。なぜか日本の自動車雑誌では記事になりませんでしたがね(苦笑)。
トヨタとしては、英国での売り上げ貢献になると考えてのことでしょうが、英国BBCの人気番組“Top Gear”での Lexusの評価は最低です。
Lexusの見た目は高品質だが、ひどく退屈なクルマ。曰く自動車界の図書館員なんだそうで……。

昨年の1月に放映されたインプレッションをどうぞ。

Richard Hammondによれば、Lexus LFAの一番の問題は、その価格にあると。
彼によれば5万£なら買いだが、Lexus LFAの価格はそれをはるかに超える34万£!
これは FERRARI 599よりも13万£(約1500万円)も高い。
しかも 599より速いわけではない。

言うなれば、これは「エンジニアの夢精」。
存在する価値はあるが、値段的にはあまりに酷い。
問題は他にもあります。何だかんだ言っても、結局“Lexus”ってのが気になる。34万£する Lexusに乗ることが、どうも気恥ずかしい。
何ていうか、結局“Lexus”なんだ。

Richardの気持ちはよくわかります。自分もトヨタがどんなに良いクルマを作ろうが、所詮は××の自動車なんですよ。
日産 GT-Rの6倍も速くないのに、値段が6倍というのが納得いかないと Jeremy Clarksonは結論付けておりました。


値段もアレですけど、Lexus LFAの最大の欠点は、そのデザインにあると自分は考えております。*1
B級自動車雑誌の「ベストカー」に於いて、元日産デザイナーの前澤義雄氏とスーパーカーを大衆レベルで語る清水草一氏によってバッサリ斬られている。前澤氏はヤンキー文化が充満していた日産に於いて、初代プリメーラや4代目パルサーなどのヨーロッパ嗜好のデザインを残している。

前澤「ああいうクルマは、カネとヒマさえあればできる」
清水「えっ!?」
前澤「ある程度の技術を持つ自動車メーカーならな。けど、作ってどうする。ああそう、で終わりだ」
清水「LFAって構想から完成まで10年かかっているんですよね」
前澤膨大な時間とカネだ。そんな余裕があるなら、量産車にもっとカネかけていいデザインを作れと言いたい
清水「そんな!スーパーカーはクルマ好きの夢じゃないですか!作る側にとっても。でしょう?」
前澤「なら概論として言うが、NSXにしてもGT−Rにしても、これだけのクルマを作って、なぜデザインだけが二流なんだ
清水「経験がないから、ですか?」
前澤「クルマはひらべったく、幅を広くすれば、誰だってうわ〜〜〜となる形が作れる。そこに新しい魅力がなくては、なんの意味もない。そのなかでランボルギーニアストンマーチンフェラーリマセラティは、独特の個性、魅力を出している」
清水「じゃ、なぜ日本のメーカーには、スーパーカーをデザインする力がないんですか?」
前澤「メカニズムを作ることで精いっぱいになり、デザインはどうしても〝あてがい扶持〟になる」
清水「あてがい扶持?」
前澤設計側から与えられた条件に従って、『さあ、これに着せ替え人形を着せろ』ということになってしまうんだ。それは本質的には、デザインではない
清水「なるほど」
前澤「だからあの程度のものしかできないんだ」
清水確かにLFAは、スープラにアイライン引いてピアス付けて終了、みたいなカッコですよね。スーパーカーのオーラがまるで足りない
前澤「着せ替え人形だ」
清水「じゃ、いいスーパーカーデザインを実現するためには、作り続けて経験を積むしかないんですね?」
前澤「そうだ」
清水「しかしLFAには、次はないでしょうね」
前澤「無理だろう」

Lexus LFAはトヨタがF1に於いて10年で優勝できるとの都合の良い予想で作られたクルマだ。「エンジニアの夢精」、そこにはデザイナーの入り込む余地はなかったのである。



会場では謎のドライバーSTIGの人形が。

STIGが何かわからない方は、土曜深夜のBSフジにて Top Gearをご覧あれ。
http://www.bsfuji.tv/top/pub/topgear.html
http://www.topgear.com/uk/

*1:ちなみに自分が最後にトヨタ車のデザインを評価したのは、初代 Yaris (Vitz)でした。これはどうやらフランスでデザインされたようですが。