Conrero-Alfa Romeo


水冷直列4気筒 DOHC 1147cc

オーナー氏曰く、ルマンに出場しているとのことで、 Conrero-Alfa Romeo 1150 と思われる。1960年のル・マンに出場し、40位でフィニッシュしている。
シャシーは鋼管フレームで、アルミ叩き出しのボディを架装している。

カルロ・アバルトと並び称される Virgilio Conrero 。アルファ・ロメオのチューナーとして有名。

カーグラフィック1964年6月号にて宮川秀之氏がコンレロの紹介記事を書いている。

工業学校を終えるとすぐフィァットの航空部門に入り,飛行機エンジンと取組み,
1944年,事実上の解散までここでエンジン関係の仕事を続けた。常に最高の性能を要求する航空機エンジンと取組んだ経験が,現在の実力を支えているバック・ボーンとなっているのであろう。終戦とともにトリノ郊外の田舎に引きこもり,自転車屋を始めたが,エンジンなしの生活には耐えられなかった。といっても当時のイタリアは日本や西ドイツと同様翼を奪われていたから,いたずらに日が過ぎて行った。とある日,知人から付近にある工場でエンジニアを捜しているから行ってみないかとさそわれ,何の気なしに工場長に面会を求めた。「もし裏手にほうり出してある25台のトラックの面倒をみられるのなら,明日から来て下さい」という工場長に,何とかしましよう,と2つ返事で引き受けたものの,自分は航空機エンジンしかいじったことがない。案内されてみた赤錆びたディーゼル・エンジンを眺めてハタと困惑したが,いまさら後に引くこともできず,トリノに用足しに行くという理由で入社早々2日間の休みを貰った。休みの第1日にはトリノを通り過ぎてミラノのトラック・メーカーOM社の門をたたき,ディーゼル・エンジンのABCの手ほどきを受け,マニュアル・ブックを貰い,急いでトリノに引返した。一生懸命だった。トリノではフィアット時代の友人に実地のポイントを教わり,何くわぬ顔で村に戻った。何日か後,再生したディーゼルの試運転の日コンレロは聞き慣れないゴトンゴトンという音に,「しまった,これは物にならない!」と思ったそうだ。しかし見事に動いたトラックは工場長を大いに喜こばせた。
 コンレロがモーター・スポーツの世界に入るのは,それから程なくトリノに自動車の修理工場をもち,顧客の一人だったIng. Savonucci と知り合うことから始まる。
今日サヴォヌッチはクライスラーガスタービンの開発に功のあった人として関係者に知られるが,その頃は一世を風靡したチシタリアのディレクターであった。サヴォヌッチ―コンレロの最初の車は1948年の170HPエンジンをもったモノポスト・レーサーで,オスペダレッティのレースで見事初陣を飾った。さらに何台かのレーシング・マシーンを作った後,このコンビはアルファ・ロメオ1900c のエンジンをダブル・イグニッションの161 HPに改造強化し,自製のシャシーに搭載,1台のスポーツ
を作り上げた。コーチワークをギアが受持ったこの車は,1953年のミレ・ミリアで3ℓのフェラーリやマセラーティと果敢に渡りあい,一躍有名になった。これが後にスーパーソニカと名付けられて数台が,熱烈な注文主のためにカスタム・メイクされた有名な車である。
アルファ・ロメオとの結びつきはこれが最初であるが,1956年に出現したジュリエッタによって,コンレロの本格的な活躍が始まった。無名の青年ドライバー カルロ
アバーテも,リカルド・ロドリゲスもコンレロとともに勝利の道を歩んで後に一流のレーシング・ドライバーとなったのである。特にアバーテは後にフェラーリにノミネ
ートされるまで,コンレロに無数の勝利をもたらした。
1957年のシーズンにはザガートの850kg しかない軽いボディを架装したスプリントが,アバーテの操縦でスピード・レースとヒル・クライムに数々のクラス・ウィンをあげ,同じ年フランスのランスで行われた12時間レースでアルファ・ロメオ・コンレロは総合の3位に入った。この勝利以来,コンレロのもとにはフランスからのチューン・アップの依頼がつぎつぎに飛び込んでくるという。先頃行われたセブリング12時間の総合13位,GT1600ccクラス優勝を含めて,コンレロは実に530以上の入賞を記録している。たったの530と思う人があるかも知れないが,これはちっぽけな町工場の戦績なのである。
「リタイアしたときの責任と,負けたときのくやしさが自分にムチ打って新しい仕事に向わせてくれる。それに何といっても好きな道だし,若い人と一緒に過せるの
は楽しい」とコンレロ氏は結んでくれた。




日本一の技を持つ、某所で時間をかけてレストアされたクルマの仕上がりは素晴らしい出来だ。





マフラーはフロント・ホイールハウスから出て、運転席横のサイドシルを通ってリアのホイールハウスから出ている。