CLUB ZAGATO GIPPONE 2010 その1 LANCIA FULVIA SPORT ZAGATO 1.3

3時間半 FIAT 500 をぶっ飛ばして(帰りは渋滞で約5時間!)、浜名湖で行なわれた“CLUB ZAGATO GiAPPONE”主催の初の単独イベントを見学させてもらった。
クラブのサイトで舘会長は、ZAGATO を次のように紹介している。

(初代)石井会長はCLUB ZAGATO GiAPPONEのことを「"変な"クルマの会...。」とあえて呼んでいました。自虐的なものの言い方ですが、ZAGATO好きには多かれ少なかれ..."ゲテモノ"好きと言われてもおかしくない趣味嗜好があると思います。『他とは違うモノ』、『異形の存在』...好き嫌いがハッキリ別れる Design...それがZAGATO Designです。変だけど異質な洗練されたものを感じます。他のCarrozzeriaには見られない灰汁の強さ...私はそれがたまらなく好きなのです。

http://zagatoclub.jp/greeting/index.html

"変な"クルマ」、これほど端的に ZAGATO のイメージを表した言葉もないだろう。
Pininfarina と対極の位置にあるのが ZAGATO なのだろう。特に90年代以降は「変なクルマ」が多くなった気がするが……。

60年代までの ZAGATO は、「変なクルマ」ではなく、素直に格好良いスポーティーなイメージだったと思う。
ランチアは57年の Appia Sport から ZAGATO によるスポーツ・モデルを各シリーズのトップ・モデルとして用意してきたが、FULVIA にもこの伝統が受け継がれた。


この前の LANCIA LUNCH 2010 で FULVIA SPORT ZAGATO も展示されていたが、今回はシリーズ1も展示されていた。

右がシリーズ1の“1.3”で左がシリーズ2だ。シリーズ1の方はザガートがボディを担当、スチール+ボンネットとドアがアルミ製だ。1893台が製造された。
フィアットによって製造コストが見直されたシリーズ2はオール・スチールのボディとなる。50㎏ほど重くなったが、ミッションは4速からクロスの5速になり運転はし易いようだ。フロント・ブレーキのキャリパーがデュアル化されパッドの面積も拡大されている。“1.3S”で追加されたオイル・クーラーは廃止されている。外観で一番わかりやすいのはフロント・ウィンドウのメッキモールがシリーズ2では廃止されていることだ。




シリーズ1の特徴の一つが右ヒンジのボンネット。シリーズ2では通常の前ヒンジに改められている。見た目は面白いのだが、整備性はシリーズ2の方が良いだろう。




上がシリーズ1、下がシリーズ2のコクピット。シリーズ1はダッシュパネル、ステアリングは本物のウッド(ダッシュパネルはベニヤを貼っている)。シリーズ2ではプラスチックと印刷になってしまった。なお展示車シリーズ2のステアリングは純正ではない。
イグニッション・キーはシリーズ2ではステアリング・ロックと兼用の、現在と変わらないものとなっているが、シリーズ1では回してから押し込んでセルを回すタイプだった。シリーズ1のウィンカー位置が右ハンドルにもかかわらず右についていることに注意。現在の英国車ではEU規格だろうか、右ハンドルでも左にウィンカーがついている。細いウィンカーはフェラーリにも使用されている部品らしい。



この時代のクルマのリア・ゲートを支えるのはガスダンパーではない。



リアシートはバックレストが横バーだけの単純構造。この所為だろうか、日本での登録は4名乗車ではなく、2名乗車の登録となる。リアの荷室にはスペアが横たわるが、結構積めるスペースがある。




この時代のランチアのエンブレムはエレガンスを感じさせるものだ。ただし折れやすいので、シリーズ2では太い字体となっている。





ウィンドウ・ステッカーは新車から貼られているもの。オーナー氏によれば、この個体は当時のランチア正規代理店であった国際自動車商事によって輸入されたものだという。




シリーズ1のエンジンは1216ccの極初期型(総生産台数202台)から1298㏄に排気量がアップされている。2基のソレックスC35PHHキャブレターを備え、87ps/6000rpmを発生した。ソレックス・キャブレターは、この狭角V4エンジンに合わせて造られた小型のツイン・チョーク。



タイアは145HR14インチ。これはオリジナルのサイズだそうだ。銘柄はミシュランのXAS。古いクルマのために、こういうサイズのタイアを用意しているのは流石欧州のメーカーならでは。写真ではわかりずらいが、純正のホイールキャップには LANCIA の文字がエンボス加工されている。




この個体、適度なヤレとフェンダー・ミラーが日本に輸入された正規ものである歴史を感じさせて良い雰囲気を醸し出している。「変なクルマ」が多い ZAGATO だが、ボディの柔らかな色合いもあって落ち着いたランチアらしい雰囲気を放っていた。
どうやら自分はこのクルマの虜になってしまったようだ。

オーナー氏はカーグラフィック67年10月号の表紙で初めて FULVIA SPORT を見て以来、ずっと憧れのクルマだったそうな。古本屋で67年10月号を見つけると必ず買っているそうだ。自分も早速ネットで注文して、今日それが届く。内容は ZAGATO 特集なので楽しみにしている。


【関連URL】
LANCIA LUNCH 2010 その5 LANCIA Fulvia Coupe/Sport
http://d.hatena.ne.jp/gianni-agnelli/20101112/1289487936