お払い箱だったガスタービン車

94年に生産が終わった“XJ-220”から、ジャガーが16年ぶりに発表したスーパーカー“C-X75”

基本的に電気モーターで動くのだが、バッテリーへの充電には、95ps/80000rpmを発生する2個のガス・タービン・エンジンを使うところが肝だ。これにより航続距離は900㎞、パフォーマンスも0-100km/h加速3.4秒、最高速330km/hとスーパーカーに相応しいスペックとなった。

ガスタービン・エンジンとは、簡単に言えばジェットエンジンのことだ。タービンという風車を何段も備えて空気をかき込んで圧縮、その高圧の空気に燃料を吹きつけて点火、燃焼させて高温で膨張したガスにして噴き出し、その反作用で前進するという仕組みだ。高圧の燃焼ガスでまた別のタービンを回して、その軸から動力を取りだすのがターボシャフト。これが、いまではヘリコプターや軍艦にも使われている。米軍の主力戦車М-1にも採用されている。

“C-X75”はバッテリーへの充電用としてガスタービン・エンジンを使っているが、かつては駆動用としてクルマへの搭載が考えられた時代もあった。



“1954, Fiat Turbina”
220ps/22,000rpm 最高速度249.395㎞/h



“1956,RENAULT ÉTOILE FILANTE”
270ps/28,000rpm 最高速度308.85㎞/h




“1965, ROVER BRM”
150ps/39,000rpm
英国人としては、これでもカッコ良く仕上げたクルマ。1965年のルマン24時間に参戦、ドライバー“Jackie Stewart”と“Graham Hill”によって10位となった。




“1967, STP Oil Treatment Special”
1967年の“INDY 500”に参戦。550psを発生する“Pratt&Whitney”製エンジンはコクピットの左に配置された。インディ500は左回りのオーバルを凄まじいスピードでただグルグル回るだけのバカみたいなレースだからこれで良かったのだ。550psのパワーを受け止めるために4輪駆動となっている。
レースは圧倒的な速さを見せつけながら残り3周、ギアボックスの故障でリタイアとなりました。




“1968, HOWMET TX”
GEがヘリコプター用に試作した330psエンジンを搭載、耐久レースにエントリーしたが、ルマン24時間では事故と故障で38位に終わっている。



“1968, LOTUS 56”
またもやインディに挑戦したガスタービン4輪駆動車。450psのエンジンは普通にミドシップに置かれております。ウェッジシェイプそのもののデザインはまさにミニカーの様。レース結果も燃料ポンプの故障でリタイアとなったそうな。

ガスタービンはスロットル・レスポンスが悪いし、エンジン・ブレーキが効かない、燃費が悪く(特にアイドリング時でも数万回転するのだから仕方なし)、高温の排気ガスが出るし、ゴミや埃を吸い込むと御釈迦になっちまう……なんだかんだで、現在に至るも市販車として発売できないってこった。