STANGUELLINI STORY その5 Bialbero ツインカム・エンジン


“1950, 750 Sport”

直列4気筒 DOHC 743cc 50ps/6500rpm

1950年のF2選手権“Grand Premio di Modena”*1にドライバー、セルジオ・シギノルフィは新しいスタンゲリーニ、“750 Sport”で姿を現した。フロント・フェンダーを一体化した魅力的なボディはスタンゲリーニ自社製で、小さなエンジンフードの下も、従来のフィアット・エンジンをチューンしたものではなく新開発のスタンゲリーニ自社製4気筒ツインカムを搭載した。


このマシーンでシギノルフィは第1ヒート1位、第2ヒートではバレンツァーノのナルディー・ダネーゼ“Nardi-Danese”に次ぐ2位に入った。しかし第3ヒートではクラッシュ、優勝したのはフェラーリ166のアルベルト・アスカリだった。ちなみにファンジオもフェラーリ166で出場しているが、エンジンの故障でリタイアしている。


“750 Sport”のフロントサスはアッパー・トランスバース・リーフ+ロワー・ウィッシュボーンの前輪独立懸架でフィアット・トポリーノ(500)のメカニズムだ。


またシギノルフィは1100㏄版“Barchetta 1100 Bialbero Sport”でもファジオリを抑えて優勝した。さらに1951年の“Giro di Sicilia”にも出場、スタンゲリーニより遥かに大排気量のビオンデッティ“Biondetti”のジャガーやコルテーゼ“Cortese”のフレイザー・ナッシュを抑え、マルツォット“Marzotto”とタルッフィ“Taruffi”のフェラーリに続き3位に食い込んだ。
その後2年間、スタンゲリーニは顧客のクルマのチューンしたフィアット・エンジンを自社製ツインカムに載せ換えた。


この4気筒ツインカム・エンジンは、スタンゲリーニの技術者ゴルフィエーリ“Golfieri”の設計である。シリンダーヘッドとスチール製ライナーをもつブロックはオール・アルミ・ブロックで、コンロッドは軽合金製。傾斜角45°のバルブを動かす2本のカムは二重のチェーンで駆動する。2基のツインチョーク・キャブレターはウェーバーかデロルトを使用し、大部分のエンジンはドライサンプだった。
バルケッタとモノポストに載った750㏄の出力は60ps/7500rpmから70ps/9000rpmとさまざまだったが、1955年には今までのロングストロークからスクエアに変更、70/80ps/8800rpmとした。これによりリッターあたり100psオーバーの素晴らしいものとなった。
さらに1957年には75/90psのショートストローク・エンジンを発表、翌年には80/90ps/12000rpm(推定)に出力を向上した。1100ccは88、90、92、95、106、110psがあり、750ccエンジンより低回転で走ることができた。さらに当時のカタログには1.4リッターと1.8リッターのツインカムもあった。またツインカム・エンジンを採用してから、サスペンションもリーフからコイルへと変更した。

*1:モデナの飛行場、滑走路の一部をサーキットとして利用している。