九五式軽戦車

日曜日、お台場のイベントで展示された95式軽戦車の撮影用プロップ(大道具)。
太平洋戦線で日本軍と戦った海兵隊を描くリアルなTVドラマ“THE PACIFIC”に使われたもの。撮影用にフォードのV8エンジンを搭載しているので、実車よりも機動力はあるかもしれない。

 1936年に製造が開始された戦車で、事実上の日本軍主力戦車。総生産数2375両は日本の戦車生産史上最多となっている。
 主砲は歩兵砲由来の37センチ砲で貫通力が低く、米軍の軽戦車であるM3スチュワートの装甲(50mm)すら撃ち抜くことは困難であった。砲塔には車長が砲手を兼ねて1名が乗員、砲と後部機銃を操作する。旋回ハンドルはなく、砲手の肩を主砲に当てて回転させる、人力旋回方式であった。
 搭載されたエンジンは空冷直6ディーゼルで、最高速度40km/hという日本軍戦車最速を誇った。その機動力を確保するためには軽量化が前提で、装甲厚は最大で12mmしかなく、小銃を跳ね返すぐらいの防御力しかなかった。これには陸軍から要求された総重量が約7tに制限されたことにもよる。輸送船による移動の際、当時の標準的な港湾設備や船載クレーンの能力から、重量を6t以内に収めることが要求されたようだ。また、当時の日本の技術力では高出力軽量の戦車用ディーゼルエンジンが開発できず、エンジン重量がかさんだこともあり、装甲厚を薄くして車重を軽量化するしかなかった。エンジン出力の低さを軽量化で補うというのは、海軍の零戦と同じ発想。その一方で防御力は軽視されているのも同じだ。もちろん無線機は搭載されていない。日本陸軍戦車兵たちは訓練によるカンと阿吽の呼吸で戦闘に望んだのであった。