Lancia Lunch 2012  1963 Lancia Flaminia 3B Coupe Pininfarina

 Lancia Flaminiaは60年代初頭の同社生産モデル中、最高級のクルマで5つのヴァリエーションがあった。基本型はベルリーナでもっぱら官公庁、重役用の4ドア・セダン(駐日イタリア大使も使っていた)だが、これをベースに Pininfarinaのクーペ、Touringのコンバーティブル及び Zagatoのスポーツが準生産モデルとしてカタログに載っている。
 当時もっともエレガントなツーリングカーとさえ言われていたのが、この 3B Coupe Pininfarinaである。生産車として世界で唯一の 60°V6気筒エンジンを持っていた Flaminiaは、全シリーズにデフと一体をなす4速フルシンクロ・ギヤボックスと、リーフによるドディオン・アクスルを装備していた。かつてヨーロッパのロードレース界に勇名をはせ、いわゆるグラン・ツーリスモの草分けとなった一連の Aurelia GTから受け継がれた伝統のシステムが受け継がれていたが、当時の最新のGTと比べてもいささかも古さを感じさせないクルマであった。ブレーキは Girling製4輪ディスクブレーキ。



 サイドウィンドウからテールに流れるクロームメッキは、最近のシトロエンDS5の売りであるAピラーのクロームメッキ(サーベル)に影響を与えているはずだ。



 ギラギラしていない上品な佇まいは、まさに高級車に相応しい風格を備えている。当時のイタリア車に珍しく、ミッションは4速全シンクロであり、シフトノブは垂直で短かい。たっぷりとしたサイズのセミバケットシートの隅はレバーの動きのために切り欠いてある。ステアリングはノン・パワーだが、操舵は軽いという。



 製造元の Pininfarina工場でも Alfa Romeoよりも2倍の手間ひまを Lanciaのボディに払っていたといわれる。Lanciaの顧客ほど、ボディの音と振動に神経質な人間はいないと言われていた。



 60°V6気筒OHV 80×81.5mm 2458cc 圧縮比9.0:1 128HP/5600rpm 18.7mkg/3500rpm Max 178km/5800rpm.
 
写真には写っていないが、ラジエター左にオイルクーラーが備わっている。63年型から装備されたもので、このクルマが本領を発揮する長距離高速運転でも温度は安定することに貢献した。エアクリーナーはノン・オリジナル。本来は薄いものが装着されている。