1952 PANHARD X 87 JUNIOR 130 Sprint


Panhard flat-twin OHV 850cc 42hp/5500rpm MAX 135km/h.

 北米の PANHARDディーラーであったJB Fergusonによる「小型ロードスター」の要請により、 PANHARD DYNA Xをベースに開発した横3人乗りのオープン・スポーツが JUNIORである。何とも言えない可愛らしい顔つきと Panoramicと称された独特のフロント・ウィンドウ。これにより斜め前方の視界を確保するのは戦前からの PANHARDのイコンとも言えよう。ベースとなった DYNA Xと違い、フェンダーはボディと一体化している。全高は 1280mmと当時としては驚異的な低さを誇っていた。「ブリキのオモチャ」と思われる方もいましょうが、可能な限り装飾を排除したシンプルなデザインは、1956年までの総生産台数は4206台と、当時の欧州における最下限のスポーツカーとして好評でありました。



 ボディはオープンということもあり、セミモノコックのアルミニウム製ではなくラダー・フレームのスチール製となっている。架装は Di Rosaに依頼されたが、まもなく PANHARDが吸収合併した。エンジンは DYNA同様に空冷フラット・ツインの前輪駆動。バルブ・スプリングがコイルではなくトーションバーというユニークな設計。水平のヘッドに垂直にトーションバーが突き出ているのが上の図でわかりますな。当初は 745cc 35hpの 120であったが、同排気量38hpの 120 Sprintとなり、850cc 40hpの 130、同排気量 42hpの 130 Sprintの4車種があった。定員はベンチシートで横3人がけ。トランク・リッドはなく、シートを倒してトランクにアクセスする方式。車重はスチールボディなので元の DYNA Xよりも100kg重たくなったのは仕方ないところ。最高速度 135km/hは当時の英国ライトウェイトのスプリジェットと同等。55年にはオプションでスーパーチャージャーを設定、60馬力に強化されて最高速度は145km/hとなっている。
 サスペンションは DYNA X同様に、フロントは上下横置きリーフ・スプリングの独立懸架、リアは横置きトーションバーによる半独立。ギアボックスは4段でフルシンクロ。シフトレバーは 2CVのようにダッシュボードから伸びていた。




極初期型は DYNA Xのグリルが採用されていた。後ろヒンジのドアに注意。




ホイールとブレーキ・ドラムが一体で、タイア交換はリムだけが外れるデタッチャブル・リム方式なのは DYNA Xと同様である。

さて、この JUNIOR、PANHARD自身により多様なレーシングカーが造られ、ル・マン等で活躍します。その話はまた明日にでも。