Touring Car Race. Sir John Whitmore Part1

 多芸で、偉大な才能を持つレーシング・ドライバーの見本として Alan Mannが讚えるレーシング・ドライバー Sir John Whitmore(1937〜)。1963年には British Saloon Car Championshipにて BMC Mini Minorを操り優勝、その後 Cortina Lotusを駆使してツーリング・カー・レースで大暴れした強者である。24 Heures du Mans(ル・マン24時間)にも5回参戦。1966年にレース活動をリタイアしている。
 今日から数回に分けて、彼が語る Touring Car Raceの魅力をお届けする。



 私の偏見かもしれないが、乗用車によるレース、所謂‘Touring Car Race’は、他のクラスのレースよりも観客の興味を引くと確信している。純粋主義者(この場合、私はフォーミュラー・グランプリ狂信者を指しているのだが)はこの暴言を非難するだろうが、反論するのは難しいだろう。
 日常使われている乗用車が恐ろしいまでに傾いて、ピッタリとくっ付き合い、タイアが悲鳴を上げ煙を吹き、ハンドルを一杯に逆に切っている様子は、同じ形のフォーミュラー・カーがレールの上を走っているようにコーナーリングするガチョウの行列よりも、よっぽどスリルがある。
 観客席の素人は、彼には到底できないことをやっている連中に注目するので、観客の興味をひくことになる。グランド・スタンドや柵によじ登っている人は、彼の母親の Cortinaを運転したことはあっても、130km/hでカーブを曲がった経験はない。むろん、フォーミュラー・カーを運転したこともないし、ロールもしない。その上めったに煙をはくようなことはない。従って、明らかにフォーミュラー・マシンの運転の方が易しいに違いないと考える。むろん、こう考える人は絶対に間違っているが、これは観客のほとんどの考え方なのである。
 もうひとつ‘Touring car race’について面白い話がある。例えば、‘Formula car race’では、8位になった男はレースから決定的に外れてしまうが、‘Touring car race’では、同じ8位でも彼のクラス優勝争いが激しく行われることもあるので、観客の興味をそそる。
 それに加えて、‘Touring car’は普通色とりどりで‘Formula car’はたいていどこにでもあるブリティッシュ・レーシング・グリーンに塗られている*1。従って、F1GPでは、マシンの形、色、爆音で見分けるしかなく、それが往々にして難しく、ドライバーのヘルメットかゼッケンナンバーだけが頼りになることが時としてある。

*1:60年代終わりまでF1のボディ・カラーはチームの国籍で色が決められていた。英国ならグリーンだったのである。