1957 SCALEXTRIC Maserati 250F


これは、1957年に“SCALEXTRIC”ブランドで発売された最初のスロットカーである。
ボディーはブリキ製、ドライバーのフィギュアはラバー製。

それまで、レールの上を走らせるモデルは発売されていたが、コースが鉄道模型と同様に常設となるのが家庭で遊ぶ際にネックとなっていた。家で遊ぶためには、組立分解が容易なコースが望ましい。
Fred Francisはスロット(溝)・ガイドを考案することにより、それを解決したのである。それは今日のブラシによるものではなくて、金属製の車輪による集電方式であった。第5の車輪となるスロット・ガイドが金属製の溝をなぞることにより、電気を集電してモーターを回転させて走るというスロットカーの基本を考案したのだ。Francisは英国に於いて特許を取得している。金属製ホイールによる集電方式は、コーナーで集電能力が不安定となることが欠点であり、後にブラシによる集電方式に改められることになる。



ボディーは元々、ゼンマイ動力のブリキ製オモチャとして“Scalex Car”として売られていたもの。それに電気的な“tric”を加味したことにより、“Scalextric”と名付けられた。

“Scalextric”は 1957年の Harrogate International Toy Fairに出品されたとたんにヒット商品となった。
最初のセットは、2台の Maserati 250Fと8の字のコースが備えられていた。コースの素材はラバー製で、自由に組立分解ができるものとなっていた。
Maserati 250Fが選ばれたのは、この年のグランプリ・チャンピオン Fangioが操縦していたマシンだったからである。

コントローラーは、今日のようにトリガーでスピードが調整できるものではなく、シンプルにボタンで電源をオン、オフするものとなっていた。



この初期の“Scalextric”で遊ぶ Stirling Mossと最初の奥方との貴重な映像。

Stirling Mossはスロットカーが好きなことで有名で、60年代のスロットカー雑誌にもよく写真が掲載されている。




Maserati 250Fの次には Ferrari 375と Austin Healeyが発売されることになる。中でもブリキ製の Healeyは数か月しか販売されなかったので大変貴重なものとなっている。