Goodwood Festival of Speed 2011 SPORTS PROTOTYPES

スポーツ・プロトタイプのカテゴリーは、エンジン出力や最高速度やコーナーリング性能に関する技術革新に、多大なる機会を与えることとなった。



1964 CD-PANHARD 3
空冷水平対向2気筒 OHV スーパーチャージャー 1200cc 70ps
 PANHARD 、現在では PSA グループの軍事部門で装甲車を製造しているメーカーだが、エンジンの搭載位置と駆動方式で模索を続けていた自動車創成期の 1890年に、今日に至るまで採用されている、フロント・エンジン縦置き→リア・ドライブというFR方式(System Panhard)を世界に先駆けて採用したメーカーである。
 CD-PANHARD の CDとは、開発車 Charles Deutschの頭文字である。Charles Deutschは René Bonnetと共に PANHARD Dynaをベースに DBという名称で魅力的な小型スポーツカーを開発していた。両者が不幸にも決別した後に造られたのが CD-PANHARDである。
 巨人 FORDが参入する前までル・マンは広告宣伝などの商業主義とは決別した真のモータースポーツの夢が残っていた。地元フランス車に対する配慮から熱効率賞と称される燃費も考慮された賞も設けられていた。
 CD-PANHARD 3には今日では常識となった、空気の流れと横風の影響、それに関わる柔軟なサスペンションを複合的に考慮し、高度な計算による高い次元でのバランスを保つことにより、最高速度域に於いて最も空気抵抗を少なくかつ安定したクルマに仕上げることに成功したのである。
 搭載しているエンジンは 70馬力の水平対向空冷2気筒エンジンだが、ファイバーグラス製の軽量ボディー(560㎏)と高度な空力設計により、最高速度は 180㎞/hに達するほどの高性能であった。もちろんFFである。
 1964年のル・マンでは2台が参戦したが、残念ながら2台ともリタイアとなっている。この個体は、その内の1台で77周目でリタイアとなったもの。
 CD-PANHARDのル・マンへの挑戦は、翌年の CITROENによる吸収合併により、これが最後のものとなった。しかしながら、その高い空力ボディーは PORSCHEが注目することになり、ル・マン仕様の 917LHのデザインが Charles Deutschに委託されたのは有名な話である。



フラット・ツインのエンジン音は甲高く、グッドウッドに響き渡っていた。