the Cartier Style et Luxe Concours  Extreme Lines - Pre-War Streamlined Specials

Goodwood 2011 Festival of Speed 、the Cartier Style et Luxe Concours の続き。
 今回は戦前の流線型スペシャル。まだ空気抵抗理論が確立されていなかった時代の先駆者による試行錯誤は、滑稽なモノもあるが、アールデコ調の優雅な時代を感じさせるものも多い。




1934 DYMAXION STREAMLINE TRANSPORT
 この奇妙な形のクルマは、建築家、工業デザイナーなど多彩な肩書きを持つ北米の Buckminster Fuller によって造られた。驚くべきことに3輪で、前輪2輪が駆動、後輪が真横までステアするようになっており、全長約6メートルの巨体でも小回りが利くようになっている。ボディはアルミニウムでシャシークロムモリブデン鋼を採用、丈夫で軽かった。軽量化と空力を重視したスタイルにより、11人乗車の大きなボディにもかかわらず、燃費も当時のアメリカ車の水準からすれば良かったようだ。エンジンはフォードのV8をリアに搭載。後方視界は、リアの垂直ウィングの中に取り付けられたペリスコープによって確保されているのもユニーク。まさに移動する家であった。
 数種の試作車が造られたが時代を超越したクルマは大衆に受けいられることなく終わった。しかし、今日の日本を見ると、路上のクルマは移動する家のようなワンボックスばかり。Fuller の先見性は正しかったようだ。


ウィンカーに矢印があることに注意。

 戦後、ダイマクションの卵型デザインは多くのデザイナーに影響を与えた。最も有名なのが Fiat 600 Multipla であろう。それとトヨタの初代エスティマも。
http://d.hatena.ne.jp/gianni-agnelli/20110305/1299250835


この頃のトヨタには少なくとも創造性があった。






1939 Aston Martin Atom
 デザインは Claude Hill。当時の一般的な大型グリルをもたないボディはアルミニウム製で軽合金の鋼管フレームに架装されるという、4ドアセダンにはオーバースペックなものであった。このような超軽量ボディは50年代になってDBシリーズとして具現化されることになる。とてもエレガントとはいえない英国流の無骨なデザインは、これはこれで味わいがあるとも言える。当時の“Auto Car”誌には、“The Future in the Present”と称賛されていた。