ファン・マニュエル・ファンジオ 生誕100年


6月24日はファンジオの生誕100年の記念すべき日だった。
自分にとってファンジオは尊敬する1番のレーシングドライバーである。

自伝に於いて、彼はレーシングドライバーの日々を振り返って以下のように述懐している。

 引退した今こそ、私はすべてのレース・ファンに、華々しい成功の裏面をさらけ出すことができる。それには、疑惑、人知れぬ苦悶、窮乏、その他あらゆる不幸が隠されている。花束や銀のカップや“ミス・なんとか”のキスで埋め合わせのつくものではない。友人が壊れた人形のようになってコースわきに倒れているのを見たり、あるいは礼拝堂に安置されているのを見る時、ドライバーは掌にじっとりと汗をかき、胸がしめつけられ、自責の念にかられる。これを償えるものは何もない。
 誇張しているのではない。ドライバーの生活はそういうものなのだ。
 スピードは生きている歓びをつくりだす。しかし、汗にぬれた枕を握りしめ、タイアの悲鳴が耳から離れず、真夜中にひとり目を醒ましたおぼえのないドライバーがいるとしたら、そいつは他の惑星から来た宇宙人にちがいない。
 私が引退を決心した時、UPの記者にこう聞かれた。「レースを辞めるのと続けるのと、どちらが大変ですか?」
私は答えた。「辞めるほうです」