Citroen 2CV 4X4 Sahara 1960-1967
空冷水平対向2気筒 425ccX2 14ps/4000rpmX2 最高速度105㎞/h (データーは1962年型)
2CVファミリーの異端車、それがサハラ(英国での愛称)だ。本格的な4輪駆動車なのだが、そのシステムは前後にエンジンを搭載するというユニークなものであった。もともとフランスの旧植民地であった北アフリカのアルジェリア油田開発用に仕立てられたものを市販化したもの。前後のエンジンを関連させているのはスロットルのみで、前だけでも走るようになっている。
前後駆動時の最高速度105㎞/h、この時の燃費は9.9〜12.4㎞/ℓと良好な値を示している。シャシーは強化堅ろう化された特製で、タイアも幅の広い155セクション・タイアを履くことにより、リアフェンダーは、よりフレアしたものとなっている。スペアタイアはボンネットの窪みに収められている。フロアから伸びるステッキ上のシフトノブは常識的なフロアに移された。
もともとサスペンション・ストロークが大きく走破性が高い2CVだが、走行できる状態での車重は約740㎏と軽く、前後重量配分が50:50と理想的であったため、路面への駆動力伝達が秀逸で、登坂能力は驚愕の45°と性能は都内に徘徊する重量級SUVなんぞ足元にも及ばない本格派のオフローダーであった。
高い走破性を兼ね備えた本格派の4WDであった2CV4X4だが、その生産台数は1960年から67年にかけてたった693台にしか過ぎず、1971年に1台だけ復刻モデルが造られたに留まっている。大口ユーザーは80台を注文したスペイン警察である。その意味においてスペインSCX社がモデル化したのは意義のあることと言えよう。
生産コストが嵩んだことが 2CV 4X4 の普及を阻んだ大きな要因であった。当初から通常の2CVの2倍の値がつけられ、1966年のカタログ落ちの際には中級車ID19リュクスと変わらない価格で売り出されていたのだ。
高い走破性を想像させる秀逸なカタログ写真。
燃料キャップは左右のフロントドアにある。燃料タンクはフロント・シート下に左右分割(それぞれ15ℓ)で搭載されている。リアクォーターのルーバーはリアに搭載されたエンジンを冷却するため。
チェコに現存する 2CV 4X4 。フロアシフトの横の小さいレバーはエンジンの前後、前のみの切り替え。エンジンの始動が前後別というのも面白い。
SCXがモデル化したのは、欧州で行われているワンメイク・レース“2CV CROSS”の参加車両。横転しても軽いので簡単に起き上がりレースに復帰するのが面白い。DSを改造したトランスポーターなど興味は尽きない。