Saab 92 1951

 スウェーデンの SAABは、 Svenska Aeroplan AB(スウェーデン語で"スウェーデン航空機会社")の頭文字を並べたもので、スウェーデン政府の意向により、国防のための航空機製造会社として、機関砲で有名なボフォース社の傘下で1937年に設立された。ユニークな設計で有名な飛行機が多い。


SAAB B17(1941)
最初に生産された航空機は単発の爆撃機 B17。ユニークなのは主脚カバーが急降下爆撃時のダイブブレーキとして作動すること。


SAAB J21(1943)
SAAB初の戦闘機は意欲的な推進式。しかも脱出装置付き!


Saab J35 Draken(1955)
スウェーデン初のマッハ2級戦闘機。2つの三角形を二重に組み合わせたデルタ翼という他に例のない独特な主翼を持ち、高速道路から離陸できる短距離離着陸性能と高速性能両立させた傑作戦闘機だ。


ドラケンのプロモフィルム。映像に出てくるクルマはもちろんSAABだ。


さてクルマの話に戻そう。SAABは戦後を見据え1944年から、SAAB 90旅客機とSAAB 91軽飛行機の開発にとりかかっていた。90、91と続く92。それは同社初の自動車だった。

SAAB 92 001(1947)
1947年に完成した試作車001は、水冷2気筒2ストロークのエンジンを横置きに搭載し、3段ギアボックスを介して前輪を駆動するFWDという当時としては珍しいレイアウトで、たぶん同じレイアウトの先駆者である戦前の DKW F9を徹底的に研究した結果であろう。それを如何にもヒコーキ屋が設計したと思わせる理想的な流線型の先進的なモノコックボディでくるんでいた。ボディのデザインは風洞実験もして確かめている。ラジエターはウォーターポンプを省略したサイフォン式。サスペンションはトーションバーでリアは独立式だった。


DKW F9 Prototype(1939)


Saab 92 (1951)
水冷直列2気筒2ストローク 764cc 25ps/3800rpm MAX 100km/h
試作車発表から3年、1950年に発表された生産モデルは、さすがに試作車の理想主義的なスタイルは崩れてしまっているが、当時のヨーロッパの小型車の中で最も空気抵抗の少ない乗用車であったはずだ。Aピラーの角度が45度というのに注目。この当時の一般的な乗用車が垂直から30度未満であったのに対し、如何にも空力の良さそうなデザインだ。
その後92は足回りの良さもあって、ラリーで活躍することになる。