Goodwood Festival of Speed 2011 GARAGISTE GRAND PRIX CARS Part2

今日は珍車を紹介。結構好きだったりして。


1967 COSTIN-COSWORTH PROTOS
一見、カウルを外した、何の変哲もない普通のF2マシンなのだが……。

ロータスがアルミの応力外皮に、BRMジュラルミンを応力外皮にしたが、このフォーミュラーは……。

なんと木製応力外皮を使用したモノコックシャシーコクピットは空力を重視し、キャノピーで覆われている。

スペックは面倒なんで展示車に添えられていたモノで勘弁↓

 設計者の Frank Costin は元 de Havilland Aircraft の技術者。航空機の空気力学をモノコックシャシーに取り入れた先駆者であり、弟の Mike と共に航空機の設計者であった。その後、兄弟で50年代初頭にロータスに在籍する。初期のロータスの空力に意欲的に挑戦したレーサー11や Elite、Vanwall のF1フォーミュラーなどの傑作を輩出している。またその一方でゲテモノもあるのは事実である。
1959年に Jem Marsh と共に Marcos(MARsh and COStin)を設立した。最初に出したのがコレ↓

1960 Marcos GT
 世界でも、これほど醜いレーサーは珍しい。これも PROTOS と同様に木製モノコックシャシーに拘っている。
 これには理由があって、彼が第2次大戦中に在籍していた de Havilland Aircraft 社にて DH.98 Mosquito 戦闘爆撃機の設計に携わっていたことが影響していると言われている。


 この軍用機は、機体のほとんどが木製と言う特徴があった*1。そのため「The Wooden Wonder」と呼ばれている。木製は表面を平滑にできるため空気抵抗では金属製よりも優れるといった利点があった。そして捩れ強度も高かった。それを Frank Costin はレーシングカーにも応用できると考えたのである。

PROTOS を紹介した雑誌記事では“COSTIN'S WOODEN WONDER ?”として皮肉っている。

 さてF2での戦績であるが、芳しいものは残せずに終わってしまった。ドライバーには Brian Hart や Pedro Rodríguez、そして Vic Elford がいた。





1968 TECNO-DAF VARIOMATIC 
FORD-Cosworth MAE 直列4気筒 997cc 120馬力

 DAFはオランダのトラックメーカー。1958年に乗用車の生産を始めた(乗用車部門は1975年にボルボに吸収されている)。そのクルマが以前にも当無礼ログにて数回紹介したこれ。http://bit.ly/r89KVG

最大の特徴は“VARIOMATIC”と呼ばれるゴムベルト駆動の無段階変速機。

現在の金属ベルトを使用する元祖CVT(日本車の主流となっている)というわけだ。


それをF3にも採用してしまったのだ。世界初の2ペダル・フォーミュラー

 DAFがレース活動を開始したのは1965年。66年から67年まで、Brabham F3 の試作車ために“VARIOMATIC”を供給していた。1968年のシーズンに Techno のシャシーにプーリーをチタニウム製に軽量化された“VARIOMATIC”を搭載、F3に参戦することになる。ドライバーは後にル・マンで活躍するオランダの Gijs van Lennep*2 と Mike Beckwith 。 Lennep にとって彼の最初のフォーミュラー・レースとなった。68年のモナコは雨による悪天候により1−2フィニッシュで優勝している。
 その後“VARIOMATIC”は1993年に Williams Formula 1 で David Coulthart によりテストされ、ラップタイムを縮める効果が確認されたが、FIAが自動変速機の使用をレギュレーションで禁止し、いまに至っている。



 

*1:生産にあたって家具など木工分野の工場も動員できる上、木製ゆえレーダーに察知されにくいという利点もある。

*2:1971年のル・マンではPorsche 917Kで優勝、総走行距離の記録も樹立した。