大震災で露呈した脆弱なトヨタ生産方式
今回の大震災は、部品や製品の在庫を最小限しか持たない「ジャスト・イン・タイム方式」と呼ぶトヨタ生産方式の弱点をまさに露呈させた。
部品在庫を持たず、部品メーカー側も「在庫レス」を目指していたから、東北地方に集中している電子部品の生産が震災で停まって、あっという間にクルマを作れなくなった。致命的な「負の連鎖」で、トヨタは衝撃を受けている。
被災のない西日本から部品を調達できないかと考えるだろうが、それはできない。グローバル競争に勝ち抜くためとして、量産によるコスト削減と技術情報の秘匿を掲げ、部品の発注先をひとつに絞ってしまっている。そこがダウンすれば、すべてがダメになる構造だ。その影響は、海外の生産拠点にまで及んでいる。極論だが、たったひとつの部品がないために、クルマが製造できないということも有り得るのだ。
トヨタは、95年の阪神淡路大震災や04年の中越地震でも同じ体験をしているはずだ。東海地震など予想される大震災を考えれば、その教訓を生かしておくべきだった。やはり、コスト削減ばかり優先され、真の危機管理ができていない。多少のコスト増を覚悟しても「ジャスト・イン・タイム方式」の見直しや調達先の複数化を進めておくべきだった。それに追い打ちをかけているのが、東電の計画停電である。いつ停電になるか前夜までわからないとなれば、操業停止にせざるを得ないのだ。