MASERATI Tipo 63 鳥かご


水冷直列4気筒 2バルブ DOHC 2890cc 250ps/6800rpm 最高速度270㎞/h

 有名な Tipo 60 Birdcage をミドシップとした後継車 Tipo 63 。1961年のシリーズのためにだけ3台だけ制作された。その内の貴重な1台。たぶん、この個体はイタリアのヴォルヴィ伯爵によるスクーデリア・セレニッシマのものと思われる。
 マセラティ初のミドシップであり、空力学的にノーズから10インチのウィンドシールドへの空気の流れを良くするのが狙いであったようだ。残念だが、実はミドシップによる操縦性能の向上はみられなかった、というのが真相であった。それだけ、FRの“鳥かご”の操縦性能が素晴らしかった証ともいえる。とは言え、空気抵抗の向上は目覚ましく、オリジナルの“鳥かご” Tipo 60 より55キロもの重量増にもかかわらず、最高速度は50ps+のエンジンと相まって+60㎞/hも向上した。

 “鳥かご”は、どのレースでも練習走行でのラップタイムの記録を更新したり、レース中の最速ラップ記録を更新したが、いかんせん信頼性が足りず、リタイアに終わることが多かったようだ。それと Tipo 63 が持つ操縦の難しさが勝利を逃した要因だとも言われており、1961年のタルガ・フローリオにおけるプライベート・チームの4〜5位が唯一の成績となった。
 この Tipo 63 を最後にマセラティはレーシングカーの市販を止めている。


文字通り、“鳥かご”と称される多鋼管スペースフレームの構造がわかるコクピット


このマフラーの配置は、この個体独自のものと思われる。