Archivio Storico Fiat その2

“Archivio Storico Fiat”にはもちろんフィアット創成期から戦前のクルマも展示されているのだが、写真には失敗してしまった。
と云うのも……。





写真を見てもらえばわかるのだが、この時代のクルマは正面から写しても見分けがつかないのだ。もちろんマニアならわかるのだろうが、ちょっとしたグリルの違いぐらいで、横から見ないと違いがわからない。よって、どれも同じようなクルマに見えてしまうというわけだ。
本来なら、馬車製造職人の伝統工芸技が味わえるのがこの時代のクルマの特徴なのだがねぇ。これは大失敗だった。



“1932, 508 Balilla”
水冷直列4気筒 SV 995cc 20ps/3400rpm 最高速85㎞/h

ムッソリーニが掲げる国家社会主義の政策には当然のことながらイタリア国民の生活向上も含まれていた。
フィアットはそれに対し大衆車(ファミリーカー)で貢献することとなる。
機械的にこれといった特徴はないが、4人乗りで、故障が少なく、燃費も良い(12.5㎞/ℓ)、維持費も安い、価格も安価と、イタリア大衆の心を捉えたのであった。5年間で11万3000台も生産された。



“1934, Balilla Sport”
水冷直列4気筒 OHV 995cc 36ps/4400rpm 最高速110㎞/h

エンジンをOHV化した2座のスポーツカー。4速ミッションと組み合わされた36馬力のエンジンは車重790㎏に充分なもので、当時の英国製ライトウェイト・スポーツよりも格段に速かったようだ。価格はサルーンの1.5倍もしたので僅か1000台しか製造されていないが、日本版“1000 Miglia”に毎年数台が出場していることでもわかるように、いまなお多くが残っているようであり、“Balilla”の人気は続いているようだ。




“1936, 500 Toporino”
水冷直列4気筒 SV 569cc 13ps/4000rpm 最高速85㎞/h

戦後のモデルを含めると総生産台数は65万台にも達した大成功作。機械的部分は当時30歳であったジアコーサ氏によるもの。2人乗りではあるが、まさに“最も安く最も維持費の少ないクルマ”の設計に成功したのだ。しかも小型車だからといってオーナーに忍耐を強いるべきではないとして、4気筒エンジン、シンクロメッシュ・ギアボックス、前輪独立懸架、油圧ブレーキという当時としては贅沢なメカニズムを備えていた。