1964 Arista JD Sport


Panhard OHV 850cc FLAT-TWIN 60hp MAX 160km/h

 日本では ALPINEや Gordini、Matraなどが、嘗て存在していたフランス製スポーツカー・メーカーとして知られているが、戦後の40年代から50年代にかけて、RENAULT 4CVとか PANHARD DYNAをベースとしたスポーツカーが盛んに造られた時代があった。大半は小さなワーク・ショップで生み出されたクルマであったが、安価で手頃なことを武器に、スポーツカーに飢えていた当時の若者たちの消費者心理を鷲掴みにし、ささやかな市場ではあったが奮闘していた。しかしながら町工場の域を出なかった、これらのメーカーたちは、激しい企業競争の渦に巻き込まれて消え去るに運命に有り、60年代末までに消滅してしまったのである。

 Aristaもそのような泡沫スポーツカー・メーカーのひとつであった。
 1952年にパリで Panhardと NSUのディーラーを経営していた Raymond Gaillardが設立したのがAristaだ。60年代初頭にデザイナー Jacques Durandを招き入れ、彼はイタリアン・デザイン風のファストバック・クーペをデザインする。それが 1963年に発表された JD Sportである。他の ARISTA同様にコンポーネンツは PANHARDを使用。このクルマには PL17のシャシーが流用され、エンジンも PANHARDお得意(戦後はこれしかなかった)の空冷水平対向2気筒エンジンを搭載。620kgの軽量グラスファイバー・ボディを纏い、最高速度160km/hを誇ったのである。しかしながら、当時すでに空冷2気筒エンジンは時代遅れとされ、その高価な車両価格とともに売れることはなかった。
 JD Sportは僅か5台が製造され、1967年に ARISTA社は短い生涯を終えている。同社の総生産台数は106台と伝えられている。