1956 MG EX179



1956年、Bonneville Salt Flatsにて CLASS Fの速度記録を樹立したクルマ。
 エンジンは水冷直列4気筒 DOHC 1466ccの XPEGエンジン。

 話は 1951年のル・マンに参戦した EX 172から始まる。MG TDをモディファイしたもので、ナロー・フレームと XPAGエンジンを搭載していた。残念ながらピストンの故障でリタイアしている。

MG TD EX172

 1952年の終わりに EX 172の流れをくむ2台の EX 175が製作された。後の MGAのプロトタイプである。拡幅されたフレームとシートは低い位置に備えられた。しかし未だ XPAGエンジンを搭載していた。内1台はレーシング・スクリーンを備え、スピード・トライアルに挑戦したが、結果は芳しくないものであった。


MG EX 175


 その後、EX 179と改名され、流麗な空力ボディーと特別な改良が施されることとなる。これにより、米国ユタ州のボンネビル塩湖にて速度記録に挑戦する。1954年、George Eystonの操縦により、12時間での最高速度 244.8km/h、平均速度 193.184km/hを記録。7つの国際記録を樹立した。


 そして1956年にはAustin B-Series 1500ccエンジンに換装され右ハンドルに改造された。同年8月12日(日曜日)、再度ボンネビル塩湖にて速度記録にチャレンジする。目標は時速140マイル(224km/h)を突破すること。まだ夜明け前の早朝6時に、あの Ken Milesが3時間のセッションを開始。
 9時からは Johnny Lockettに交代、正午に再び Ken Milesに交代した時、不測の事態が起こった。後輪のベアリングがアクスルのハウジングからずれて外れてしまったのだ。Lockettが操縦していた時にゴムが焼ける臭いがしていた。それが前兆であった。最初の挑戦は失敗に終わった。
 失敗から3日後、水曜日の早朝に速度記録への再挑戦が行われた。今度はすべてがうまくいった。 Johnny Lockettの操縦で 10マイル区間 272.24km/hの速度記録を樹立した。