CLUB ZAGATO GIPPONE 2010 その6 1954, Moretti 750 Z


モレッティなるあまり聞かないイタリアの自動車メーカー、Moretti Motor Company は1925年、Giovanni Moretti によりトリノで創業された。最初はオートバイのメーカーだったが、1946年には最初のクルマ2人乗りの小型車“Cita”を製造することとなる。


“1946, Moretti Cita”
直列2気筒350cc、13馬力

50年代にはフィアットベースのスペシャル・モデルメーカーに生まれ変わった。ミッレ・ミリアなどのイタリア国内レースで活躍し、コンペティション・モデルも制作している。その後もフィアットベースの洒落たクーペを製造、80年代にはPanda, Uno や Regata ベースのスペシャルボディを制作、80年代半ばまで存続していた。



“1952, Moretti 750”

今回の出品車は、フレームからエンジンまでモレッティ自社製の“750”を改造、ザガート創設者ウーゴ・ザガートの長男エリオが19歳の時に指示しワンオフのベルリネッタボディを架装したもの。レーシングヒストリーもあり、54年のミッレ・ミリアに #2323 ドライバー Pravettoni / Moscatelli 組で参加しているがエンジンの故障でリタイアしている。





エンジンはルマン用のコンペティション仕様(DOHC)が搭載されていたが、長らく行方不明となっていたらしくエリオ氏が探し出し、1986年のレストア時にいまの仕様になったそうだ。フロントマスクはライトやバンパーなどミッレミリア参戦時の写真と比べてみると違うのがわかる。写真で見る限り OHV に換装されているようだ。たぶん 745cc OHV 51ps/6000rpm だろう。本来であれば DOHC エンジンを搭載していたので“750 Z bialbero”というのが正式名称だったはずだ。ザガート公式HPのモデルリストにそうある。
http://www.zagato.it/ukzh4.htm



エンジンルーム内のプレート。オイル関係はシェルを指定していたようだ。デフ・オイルまで細かく指示している。



当時のコンペティション仕様は右ハンドルが標準であった。内装も奇麗な仕上がりだが、テープによるパイロットランプの記名は惜しいところ。



この個体はザガート70周年記念イベントが神奈川県の葉山で行なわれたときにエリオ氏が持ち込んだもので、オーナー氏が彼を口説き落として譲ってもらったらしい。その人は古くから某大衆英国車販売で有名で、貴重な高額イタリア車のコレクターとしても著名な御方だというのは有名なお話。